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医薬品開発事業
慢性椎間板性腰痛症 椎間板性腰痛は、椎間板を損傷したり、変性したりすることで起こる慢性(3ヶ月以上継続する)腰痛症です。45歳までの年齢層で多く起こり、慢性腰痛の中でも40%が椎間板性腰痛とされています。 正常な椎間板にはほとんど神経が通っていないため、椎間板そのものが傷ついてもそれほど痛みは感じませんが、椎間板の外側の線維輪が損傷すると、その修復のために神経を伴った血管が線維輪の内側に入り込み、本来痛みを感じないはずの椎間板内部にも神経が分布して、椎間板への負荷で痛みを感じるようになります。 また、椎間板に対する過度の負荷などにより繊維輪が損傷すると、種々の炎症性物質が産出されると報告されています。動物実験の椎間板障害モデルでは、椎間板髄核,線維輪細胞より様々なサイトカイン・神経栄養因子が放出されていることが報告されています。また,手術時に採取したヒト病的椎間板でもこれらのサイトカイン・神経栄養因子の発現が報告されています。
現状、根本的な治療法は存在していません。薬物療法や運動療法、IDET治療といった対症療法で治療しています。 ◎薬物療法 腰痛や炎症による痛み・腫れがあるときには非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる解熱鎮痛薬が使われます。 ◎運動療法 薬物治療によって痛みが治った後に医師や理学療法士によるリハビリや運動療法をすることで回復を早めることができます。 ◎IDET治療 レントゲンを用いて椎間板の中に針を通してから針先に熱を加え、椎間板中に存在する神経を麻痺させて痛みを感じにくくします。また、椎間板の膠原繊維が硬化して椎間板が安定化することで痛みを起きにくくします。
NF-κBは、転写因子として働くタンパク質複合体で、通常は細胞質に存在するIκBαタンパク質と結合し、不活化されています。細胞が刺激されるとIκB kinase(IKK)複合体が活性化され、阻害タンパク質(IκBα)をリン酸化します。その結果、IκBαが分解され、NF-κBが遊離し、IκBαによって阻害されていた核移行シグナル伝達部位が露出し、NF-κBが核に移行して活性化されます。核に移行したNF-κBは標的とする遺伝子(GGGACTTTCCまたはそれに類似のDNA配列)に結合し、その発現を誘導します。細胞は増殖したり分化したりして炎症や免疫反応などの生体反応を引き起こします。 慢性椎間板性腰痛症において、椎間板の損傷、変性によりサイトカインが放出され、その結果、NF-κBが活性化されることで過剰な免疫、炎症反応が起こると考え、NF-κBのDNAへの結合を妨げるNF-κBデコイオリゴDNA(デコイオリゴ核酸)を投与することで、NF-κBの働きを抑制します。 これまでの薬物療法などによる対症療法では、その効果が短期間で失われていましたが、NF-κBデコイオリゴDNAの投与により、75%以上の患者が1年後まで痛みの改善を確認しており、椎間板の高さの改善も見られています。(米国後期第Ⅰ相臨床試験より)
2023年に実施された日本腰痛学会の全国調査では、慢性腰痛(3か月以上続く腰痛)の割合は、約11.5%と報告されています。慢性腰痛患者の中で、椎間板が主な痛みの原因とされる割合は、研究によって異なりますが、約55%と報告されています。慢性椎間板性腰痛症の患者数は、慢性腰痛の割合(11.5%)と椎間板性腰痛の割合(55%)を掛け合わせることで、全人口の約6.3%に相当すると推定されます。日本の総人口(約1億2,500万人)を考慮すると、約787万人が慢性椎間板性腰痛症を抱えている可能性があります。
当社はNF-κBデコイオリゴDNAの研究開発に2002年から取り組んでおり、NF-κBの活性化が原因と推定される様々な疾患や症状に対し、治療薬としての可能性を検討してきました。2018年に米国において椎間板性腰痛症の治療薬として第Ⅰ相臨床試験を実施するに至りました。2021年には臨床試験の結果、患者の忍容性が高く、重篤な有害事象も認められず、安全性が確認されました。 また、NF-κBデコイオリゴDNAを1回投与することで、早期から痛みが改善し1年後では投与前に比べてプラセボ(偽薬)群では平均40.3%(中央値32.8%)しか痛みのスコアが軽減しなかったのに対し、本薬10mg群では平均77.4%(中央値97.5%)軽減することが分かりました。細かく見てみると、半数の患者の痛みがほぼ完全に消失しました。 また、腰椎と腰椎の間にある椎間板の高さが、投与前に比べて増加していることから、傷んだ椎間板の改善が示唆されます。このような有効な結果は、他の治療薬では報告されていません。 その後、2023年から日本国内において第Ⅱ相臨床試験を実施するとともに、塩野義製薬と国内臨床試験に関する協力について契約を締結しました。