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医薬品開発事業
急性呼吸窮迫症候群(ARDS) 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、先行する基礎疾患・外傷をもち急性に発症した低酸素血症で、胸部X線写真上では両側性の肺浸潤影を認め、かつその原因が心不全、腎不全、血管内水分過剰のみでは説明できない病態の総称です。通常の酸素投与のみでは改善しない高度な低酸素血症を特徴とします。敗血症、肺炎、誤嚥、溺水、熱傷、外傷、急性膵炎など、さまざまな基礎疾患に続発する重症の急性呼吸不全で、肺への直接的または間接的な侵襲によって1週間以内に発症します。ARDSでは、血管内皮と肺胞上皮の細胞損傷を伴う肺の激しい炎症が生じ、肺微小血管内皮及び肺胞上皮の透過性亢進が起こります。 その結果、血管・気管支周囲の間質内に水分が漏出・貯留し、間質性肺水腫の状態になります。さらに、肺胞上皮まで損傷されると血漿成分を含んだ滲出液が肺胞腔内に充満し、肺胞性肺水腫の状態となります。
現在、患者の生存率を直接的に改善させる薬剤は、残念ながら知られていません。炎症を抑え、免疫を抑制する作用を持つステロイドは、ARDSの原因となる肺の炎症を抑えるために使用されます。また、中等症から重症の場合には、人工呼吸管理をサポートするために筋弛緩薬が使用されることがあります。 ◎薬物療法 苦しくなった呼吸を補助するために、薬物を用いて治療をします。ARDS薬物療法で推奨されるのは、少量のステロイドで、ステロイドは炎症を抑えて免疫を抑制する作用があります。中等度から重度であると判断された場合は、患者の自発呼吸する力を弱め、人工呼吸器に呼吸を任せるようにすることで、呼吸を安定させて管理しやすくするために、筋弛緩薬の使用も検討されます。 ◎呼吸療法 ARDSは、肺が損傷することで呼吸がしにくくなるなどの症状が出ます。まずはスムーズに呼吸ができるようにすることが大切なため、鼻にチューブを挿れる高流量鼻カニュラ酸素療法や酸素マスクを用いることで酸素投与や呼吸の補助を行います。 また、人工呼吸器を使用する場合、肺が膨らみすぎる・圧がかかりすぎると肺が傷つく人工呼吸関連肺傷害が起こる可能性があるため、人工呼吸器を使用する場合は呼気終末陽圧という圧を調整し、正しく人工呼吸器を行うことで肺が傷つくリスクを最小限に抑えられます。
AV-001はTie2-アンジオポエチンシグナル伝達軸を活性化し、複数の下流経路を刺激することにより、内皮細胞の安定性を高め、正常なバリア防御を回復させ、血管系を正常化します。血管系の正常化により、結果として血管漏出を阻止し、細菌性及びウイルス性の急性呼吸窮迫症候群、敗血症、出血性ショック、急性腎障害、脳卒中、血管性痴呆などの患者の基礎疾患病態生理に影響を及ぼしている血管機能障害を改善する可能性があります。重要なことは、実験動物を用いた複数の前臨床試験においてAV-001が内皮細胞間の結合を強化し、内皮細胞の生存を促進したことで、肺水腫が減少し、肺機能が改善し、生存率が有意に改善したことです。
2000年に公表された、米国ワシントン州の疫学調査では、10万人あたり年間64人がARDSを発症していると報告されています。ARDS発症後の死亡率は約40%にも達し、たいへん予後が悪い病態です。 米国の複数の研究データよると、集中治療室に入院した患者の約10〜15%がARDSを発症しているといわれています。米国国立心肺研究所(NHLBI)の呼吸困難症候群に関するタスクフォースは、米国におけるARDSの発生率を年間15万例と推定しています。
当社は、2018年よりカナダのバイオ医薬品企業Vasomune Therapeutics(以下、「Vasomune社」)と共同で、ARDSの治療薬AV-001を開発しています。Vasomune社は2014年にトロント(カナダ)で設立され、血管正常化戦略に注力しており、サニーブルック病院のサニーブルック研究所で発見・設計されたAV-001を開発しています。 当社は、AV-001の開発により、ARDS患者の肺機能を改善する治療薬の実用化を目指しています。 また、2025年には医師主導試験として、新たに血液透析によって認知機能に障害をもたらす細胞毒性脳浮腫を軽減し、脳の白質の機能を維持できるか評価を開始しました。2026年1月に最初の患者が登録されました。このような新たな適応を含む血管漏出が関与する疾患領域への応用可能性を検討するため、新たなAV-001共同開発契約をVasomune社と締結しました。