HGF遺伝子治療用製品の臨床試験に関する論文掲載に関する補足説明
先日、公表されましたHGF遺伝子治療用製品に関する論文について、その意義などを補足説明をいたします。
Q:この論文に記載されている臨床試験結果は画期的なものであると聞いていますが、この試験の結果をどのように解釈し、また期待されていますでしょうか。
A:今回の臨床試験では、CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)の軽症から中等度の患者にHGF遺伝子治療用製品を投与してCLI(重症下肢虚血)に至らしめないことが重要であるとの仮説に基づき検証と検討を行ってまいりましたが、この論文掲載をもって今回初めてこの考えが認められたことになります。しかも高名な米国心臓学会(AHA)が発行する一流誌Circulation: Cardiovascular Interventionに受理され、掲載された事で、その意義が世界に公表されることになります。米国では、特に再灌流治療(血管内治療やバイパス移植)を行わない場合、CLI患者の約25%で1年以内に大腿部切断が必要となり、年間死亡率は20%を超えることが報告されています。
Q:米国の患者数は多いと聞いていますが、どれくらいなのでしょうか。
A:当該領域専門家の論文報告では、毎年50万人規模の新規患者が発生しているとされています。そのうちHGF遺伝子治療用製品の投与対象となる患者数の解析をしっかり進めて参ります。 米国においては大きな市場が予測され、現在米国の専門家がその市場を解析しているところです。
Q:論文が出るまでにかなりの時間がかかりましたが、一般的に論文の掲載は、どのようなプロセスで掲載されるのでしょうか。
A:一般的に論文の原稿が学術雑誌(ジャーナル)へ投稿されると、レビューワーと呼ばれる当該研究分野の専門家に送られます。レビューワーは当該原稿をそのジャーナルへ掲載するに値するか否か、また投稿された原稿に追加や訂正が必要か、必要な場合にはその内容についての判断とコメントを記載し(「査読」と呼ばれます)、ジャーナルの編集部に返送します。通常ジャーナルはそれらのレビューワーの意見を基に原稿の著者と何度かのやりとり(内容の訂正や追加など)を行い、最終的にレビューワーのOKが出ると雑誌への掲載が決まります。 影響力のある著名なジャーナルの場合、ひとつの原稿は数名のレビューワーにより査読されるのが通常で、基本的にレビューワー全員のOKが出ないと学術雑誌へは掲載されません(掲載されない場合には、「リジェクト」として原稿は著者へ返送されます)。このようなプロセスを経て掲載される論文は、投稿から掲載まで、一般的に数か月から、場合によっては年単位の時間がかかります。
Q:この論文が出るのを待ちわびていましたが、Circulation: Cardiovascular Interventionはどのような学術雑誌でしょうか。
A:この循環器領域専門誌Circulation: Cardiovascular Interventionは、米国最大の心臓学会であるAHAの公式誌であり、インターベンション心臓病学領域における国際的一流誌です。AHAが主催しているため、査読レベルは極めて厳格であり、採択率は10%未満と言われています。また臨床・産業界の標準参照誌でもあり、当該雑誌に掲載された論文は他の学術雑誌に掲載される論文にも参照論文として引用される機会が多く、影響力の大きなジャーナルと認識されます。HGF遺伝子治療用製品は、今回の論文掲載のように世界的にも権威のあるAHAで高い評価をいただきましたので、自信を持って承認に向けた準備を進めて参ります。
Q:今後の活動についてどのような展開をお考えでしょうか。
A:今回の一流学術雑誌への論文掲載によって、南カリフォルニア大学のArmstrong教授とカリフォルニア大学のConte教授らによって進められた米国の臨床試験の成果や、その考え方が客観的に認められたことになります。8月21日のブログでも説明しましたように、生物製剤認可申請(BLA)を目指してFDAとの交渉を進めて参ります。またこれからは、HGF遺伝子治療用製品の販売について世界市場で経験のある有力な大手製薬企業と連携することを目指し、本格的にライセンス活動を進めて参ります。
