若手優秀演題賞を受賞した研究員にACRLの活動について聞いてみました(2)
(前回からのつづき)
Q:ACRLで実施されている拡大新生児スクリーニングの重要性について教えてください。新生児スクリーニングには、日本で生まれた新生児全員が受けるマススクリーニングと、ACRLで実施している拡大新生児スクリーニングがありますが、どのような違いがあるのですか。
A:マススクリーニングは、対象となる20疾患について、各地の自治体が費用を負担しますので、無料で検査を受けることができます。しかし、マススクリーニングの対象となっていない希少遺伝性疾患でも、早期発見・早期治療を行うことで、発症を防いだり、症状を軽減できる疾患があり、そのような9疾患を希望者に有償で検査するのが拡大新生児スクリーニングになります。
Q:拡大新生児スクリーニングで疾患がわかったことで、発症を防げた事例はあるのでしょうか。
A:これまでに全国様々な地域で、拡大新生児スクリーニングによって発症前診断に至り、早期治療に繋がった事例を聞いております。発症前診断のお話として特に印象深かったのが、ある姉妹のお姉さんが乳児型ポンペ病という病気を発症し、すぐに治療を行ったのですが、症状の改善には至らず寝たきりの状況になってしまいましたが、その妹は出生後すぐにスクリーニング検査を受け、同じ疾患であることが確認できたため、発症前から治療を行った結果、健常者と同様に成長できているという事例があるとお聞きしています。
Q:なるほど。拡大新生児スクリーニングによって、発症を未然に防ぐことで普通の生活ができることもあるのですね。そうなると、マススクリーニングと同じように、全ての赤ちゃんが拡大新生児スクリーニングを受けられるようになれば良いと思うのですが、現状はどのような状況なのですか。
A:確かに、全ての赤ちゃんが拡大新生児スクリーニングを受けられるのが理想ですが、現状はまだそこまでの仕組みはできていません。地域によって、拡大新生児スクリーニングを受けられない自治体も残っているのが現状です。
Q:ところで、バイオベンチャーであるアンジェスが、何故スクリーニング検査を行っているのですか。
A:当社の代表が米国のボストンにある遺伝病の治療薬を開発している会社を訪問した時に、生後24か月までに治療を施せば、その子供さんの病気の発症を抑えることができることを知り、新生児のスクリーニングがとても大事であることを実感し、帰国後にACRLの設立を決意しました。
Q:当社がACRLを設立するにあたり、スクリーニング検査に関する知見があったのでしょうか。
A:当社は、ナグラザイムの導入にあたり関係を構築してきた国立成育医療センター、埼玉医科大学、順天堂大学医学部の特に小児科を専門とする先生方の協力をいただいて、スクリーニング検査を立ち上げることができました。
ACRLにおける拡大新生児スクリーニングへの取り組みの経緯は分かりました。
次は、今後のACRLの活動について教えてください。(次回に続きます)