アンジェスの希少疾患への取り組みについて山田社⾧に聞きました
最近、米国の専門家が、医薬品開発について米国が他国に追い越されると警告し、審査手続きのスピードを上げるよう求めた、という報道がありました。この報道に関して、山田社⾧に聞いてみました。
Q
先日、米食品医薬品局(FDA)が開催した遺伝子・細胞治療に関する会議で、専門家の警告に対し米国のケネディ厚生⾧官は、「FDA が希少疾患治療薬の承認手続きを迅速化し、販売への障害を取り除く方法を検討する」との方針を示した、という報道がありましたが、この発言はアンジェスにとって意義のあることなのでしょうか。
A
ケネディ⾧官は「希少疾患の治療薬や治療法の承認を加速させる方法を引き続き検討し、米国をバイオテクノロジーイノベーションの拠点にする」と発言しています。これは、極めて大事な指摘だと思います。日本でも厚生労働省がドラッグロスやドラッグラグの対応推進策を立てていて、希少疾患がその対象になります。
アンジェスの希少疾患、特に遺伝性疾患への取り組みはムコ多糖症VI 型治療薬「 ナグラザイム」の開発販売から始まり、昨年には早老症プロジェリア症候群の治療薬である「 ゾキンヴィ」を日本で初めて開発販売しました。日本ではこれらのお薬は厚労省から迅速承認をいただき、今までお薬が手に入らなかった患者様にもご使用いただけるようになりました。
このように本当に患者様が求めておられるお薬の提供にこれからもアンジェスは取り組んでまいります。
また、米国において、希少疾患治療薬の承認手続きの迅速化に向けた方針が示されたことは、グローバルな創薬環境における重要な動きです。当社が米国で開発している製品の今後の開発方針に加え、今後、米国での開発を主導する企業と提携、共同開発や技術導入を行う場合、FDA の審査迅速化により、米国での臨床試験や承認取得が加速される可能性があります。これは、米国で得られた臨床データや規制対応の知見を活用し、日本での開発・申請プロセスを効率化することにもつながります。
すなわち、米国での制度的な前進は、アンジェスが日本国内で希少疾患領域における革新的治療薬をより早く患者様に届けるための重要な基盤となり得るのです。
Q
このケネディ⾧官がいう希少疾患治療薬の件は、アンジェスが運営しているアンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)の業務とも関連するのですか。
A
アンジェスでは、希少遺伝性疾患の早期発見を目的として衛生検査所ACRLを2021 年から運営しています。希少遺伝性疾患は、生まれてから早期に適切な治療を開始しないと、望ましい治療効果が得られない疾患があります。また、これらの疾患には特徴的な症状が少なく、日常的な診断で見つけることが難しく、見つけた時には症状が進行してしまっている場合もあります。このような課題を前提に、早期に希少遺伝性疾患を発見するための拡大新生児スクリーニングに積極的に取り組んでいます。
ACRL は、拡大新生児スクリーニング検査として、国内では最多の対象疾患数、14 疾患を対象に実施しています。ムコ多糖症(5疾患/I型、II型、IVA 型、VI型、VII型)、ファブリー病、ポンぺ病、ゴーシェ病、ニーマンピック病A/B型、クラッペ病、副腎白質ジストローフィー(ALD)、脊髄性筋委縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID) 及びアデノシンデアミナーゼ欠損症が対象です。
また、当社のACRL は、国内でも唯一、希少遺伝性疾患検査におけるワンストップ対応が可能な検査施設です。つまり、「スクリーニング検査」、「精密検査 (遺伝学的検査)」及び 「モニタリング検査(バイオマーカー検査)」がワンストップ対応で窓口が一本化されています。
これらの取り組みにより、症状が進行する前の段階で治療を開始できる可能性が高まり、従来は有効性を示しにくかった患者層においても、治療薬の効果が明確に現れることが期待されます。結果として、より有望な医薬品の開発が進み、「希少疾患治療薬の承認手続きの迅速化と販売への障害の除去」にも資すると期待しています。
アンジェスでは、このように希少遺伝性疾患の課題を認識しながら、これらの疾患に対して総合的な観点から解決策を講じて参ります。
ますますのご支援をお願い申し上げます。