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2015.01.22

エボラ出血熱抗血清製剤について (2)DNAワクチン技術を使用する意義

アンジェスMGが開発をすることになったエボラ出血熱抗血清製剤は、エボラ出血熱ウイルスのタンパク質をコードするDNAワクチンをウマに接種し、抗体をつくらせて製造します。


「(1)抗血清製剤とは?」 で書いた通り、抗血清製剤は、ウマに病原体や毒素等の抗原を注射し、血液中に抗体をつくらせてから、血清を採取し精製して製造します。

この「病原体や毒素等の抗原」にあたるのが、「エボラ出血熱ウイルスのタンパク質」であり、DNAワクチンはこれをコードしています。

抗体はウイルス表面にあるタンパク質(目印となる抗原)を狙って結合しますが、エボラウイルスの場合は表面糖タンパク質(グリコプロテイン、GP)がターゲットになります。


では何故、エボラ出血熱を対象とした抗血清製剤にDNAワクチンの活用が適していると考えられるのか、についてです。

キーワードは「安全性」と「製造期間が短いこと」です。

・安全性

弱毒化ワクチンとは異なり、病原性をまったくもたないため安全です。ウイルス自体の取り扱いがありません。この特徴はエボラのような致死性の高い病原体に対する薬を日本国内で製造する上で重要だと考えられます。エボラウイルス自体を国内に持ち込むことは大変難しいと思います。


・製造期間

製造工程が比較的単純なので製造期間が短くて済みます。
DNAワクチンは、DNAプラスミド法を使用して作ります。
プラスミドとは、大腸菌などの細菌等に存在する環状のDNAです。
(大腸菌というとO157などのイメージが強い方もいるかもしれませんが、人の腸内に存在する大事な細菌で、多くのものは無害です)

プラスミド法自体は確立された方法で、大腸菌を使って簡単に短期間で大量に目的のプラスミドを作ることができます。プラスミドに遺伝子を挿入し、大腸菌に導入して培養して増やせばプラスミドも一緒に増えます。最後にプラスミドを精製すれば、大量に目的のプラスミドを得ることができます。大腸菌の分裂は非常に早いため、培養に数日、精製も数日の短い期間でプラスミドの製造ができます。


DNAプラスミドと聞いて、ピンときた方もいると思います。

アンジェスMGのHGF遺伝子治療薬も、DNAプラスミド製剤です。HGF遺伝子治療薬の場合は、血管新生作用のあるHGF(肝細胞増殖因子)タンパク質をコードしたプラスミド製剤です。HGF遺伝子治療薬のように注射によって治療を目的としてタンパク質を発現させたり、エボラ出血熱DNAワクチンのように抗原となるタンパク質を発現させることで抗体を体内(ウマの体内)で作らせることを目的としたり、プラスミドの活用方法は様々です。 


エボラウイルスのDNAワクチンでは、

データベースに登録されている最新のエボラウイルスのゲノム配列情報を基に、ウイルス表面のGPを発現するように、
その配列情報通りのDNAを機械で人工合成してプラスミドを作り、大腸菌に導入してその大腸菌を増やし、精製してプラスミドを精製すれば、GPに特異的な抗体の生産を促す(言い換えればGPに対する免疫をつける)DNAワクチンの有効成分になります。


アンジェスMGが今回提携した米国のバイカル社は、予防ワクチンとしてのエボラ出血熱DNAワクチンを開発しており、ヒトでの第1相臨床試験を米国NIHと共に実施して、すでに安全性などのデータを得ているなど、競合他社よりも一歩進んだ開発フェーズにあるといえます。

エボラ出血熱DNAワクチンはヒトに接種をすれば予防ワクチン、ウマに接種して血清を精製すれば抗血清製剤(治療薬)として開発が可能です。


アンジェスMGはバイカル社から同社のエボラ出血熱DNAワクチンを活用して抗血清製剤を日本国内で独占的に開発し製造販売する権利を取得しました。今年の第1四半期に予備的な試験に着手します。 


今回の西アフリカのエボラウイルスの流行が収束しても、ヒトとエボラウイルスの長い戦いの歴史は続くと思います。

ですから、日本国内でも感染者が発生した場合等の対策として、治療薬を開発することは重要だと考えられます。

広報担当者としても期待したいと思います。


(過去に報告されたエボラウイルス感染 ご参考 :US CDC, Known Cases and Outbreaks of Ebola Virus Disease, in Reverse Chronological Order
http://www.cdc.gov/vhf/ebola/outbreaks/history/chronology.html )


長文となりましたが、
広報担当者の独り言にお付き合いいただきまして有難うございました。
また機会をみつけて別のプロジェクトも取り上げてみたいと思います。

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